入笠山に降り注いだミネラルを豊富に含んだ伏流水は、日本酒醸造に非常に適しています。
宮坂醸造株式会社は、この冷涼で人里離れたこの地に昭和57年(1982年)に富士見蔵を建設。
以降数多くの銘酒が醸造されています。
昭和50年代富士見町に住む小学生のウインタースポーツといえばスピードスケート。リンクは田んぼに水を張って凍らせた天然リンク。温暖化の今日では想像できませんが、富士見町の冬の日常でした。
さかのぼる事 20年。その冷涼な気候を利用して、富士見町で製氷が行なわれていたことを知る人も少なくなりました。
歴史を紐解くと…
信州・富士見町は八ヶ岳の西南麓と、
赤石山脈の北端の二つの山並みの間に開ける高原に位置する。
町には3つの駅を持ち、富士見駅の歴史は古く標高は中央線では一番高い955mに位置し、山登り観光の拠点となる。町のどこからでも富士山が見られる風光明媚な山梨県との県境の町である。
駅前の商店街は特色があり、坂を上り、坂を下るという珍しい商店街で、過去には大いに賑わった高原の避暑地ではあるが、現在は他の町の例にももれずにここでもシャッターが下ろされた錆びれた商店街となってしまっている。
しかしこの町には、富士見パノラマリゾート、富士見高原リゾートと二つの特色あるリゾートがあり、企業の保養所や姉妹都市の山の家などの大きな研修・避暑施設に加えて、多くの別荘などには四季を通して年間65万人から70万人ともいわれるお客様が訪れている。
他の市町村は、どうやって町に人を呼ぼうか? が第一段階の課題となるが、富士見町はその課題はクリアしている。壮大な景色は明治より多くの文人歌人に愛された文学短歌の町であり、アララギ派誕生と発展の地でもある。
しかしながら、駅前には人の賑わいがない。
人口の減少や商店街店主の高齢化、商業圏の郊外へのドーナツ化は進み、益々駅前の魅力が薄くなり駅前商店街は車を止める場所ではなく素通りする「道」でしかなくなった。
リゾートに訪れるお客様にとっても魅力的なフックになるものは駅前にはなく、リゾートからリゾートへの移動においても通過地点でしかない。
しかし駅にはJRでEPSONの事業所などに仕事で来る方や観光のお客様は大勢いて、ツーリストを含めて遠くからお越しになる方々が電車を待つが、駅前で時間を過ごす憩いの場所やお土産を買えるようなお店もない…という現状がある。
駅前に人が集まり情報交換をするような場所をつくることが、町の中心部の活性化には必要不可欠であるが、行政を含めて紆余曲折を繰り返しながらも形になっていない。
信州の町おこしは「お蕎麦と自然じゃ話にならない」
と言われるが、富士見の大自然が与えてくれるものを見える化して「手に取り味わうことができるもの」が出来ないか?ということを考えた時に、南アルプス山系の自然が生み出す伏流水で作られているもの。
八ヶ岳山系の伏流水が作り出しているもの。という2つを検証して見た時に、それらはそのまま富士見の文化や伝統、名産品に繋がるものであった。それは「氷」と「地元の農産物」であった。
富士見町は昭和40年代初めまで天然氷の名産地として飲食用、工業用、医療用と多岐にわたり生産され各地に発送されていた歴史がある。
駅周辺には氷畑が広がり、切り出された氷は駅の貨物ホームまでレールの上を流され、大量に積み込まれた氷は鉄道だけでなく横浜港から船積みされ全国各地に届けられ、昭和の高度成長期の下支えをしていた。
まさにここは信州の冷涼な気候と高地だからこそ可能であった「氷の町」という文化的側面を持っていた。
南アルプス、赤石山脈は「水の山並み」とも呼ばれる銘水の産地。
2014年にユネスコエコパークに認定された南アルプス、その北端の入笠山、釜無山には山に降った雪や雨が長い年月をかけて何層もの花崗岩に磨かれて、雪解け水は美味しい伏流水となってコンコンと湧き上がってくる。
その伏流水を仕込水としてお酒をつくっているのが『真澄』、富士見蔵のお酒である。
大自然のみが作り得た潤いに満ちた清らかで優しい天然水は、自然の中の蔵で静かにおいしい酒作りが営まれている。大自然の作り出した水。その水を氷にして町の名産を新しい形として復活させたい。その思いから氷づくりの挑戦が始まった。
本来お酒になる前の仕込水は門外不出とされ、一般の方が飲むことやその機会もない限定的なものだ。
その希少な水を最新の製氷技術を持つ製氷会社において透明で硬い「純氷」をつくり、先ずは「真澄のかき氷」として商品化することで、多くの方々にいろいろなストーリに満ちた希少な水で作られた氷を食べてもらう。
そしてその先にはブランド氷として昭和時代と同じように全国の方々に美味しい氷を、地元富士見町発→全国へと発信して楽しんでいただく。
そんな思いを真澄さんに伝え一緒に町おこしの為の氷づくりの作業が始まる。
寒さも増してきてお酒の仕込みも始まる2018年初冬の事である。
地球温暖化が進む中で氷の需要やかき氷の消費量は多い。
かき氷は夏の定番として市民権を持ちひとつの独立したメニューとして各地で盛んに話題となっている。画的にも涼やかで清らか、特別な氷、大きな話題と可能性の奥行きがある。
そんな中で、我々のかき氷の他との一番の違いとこだわりは、真澄の仕込水の純氷に加え地元富士見産の果物「夏いちご」「ブルーベリー」「シソ」を1番の中心メニューにして、
真澄富士見蔵でつくられる大人気の「糀あまざけ」を使った特性のシロップを、かき氷屋さんを展開する老舗氷問屋さんと合同開発したMade in Fujimi のシロップは優しくておいしい味がする。かき氷が贅沢なスイーツへと変わる瞬間である。
「糀あまざけ」はビタミンB が多く含まれ、飲む点滴ともいわれ女性に人気な事はもちろんのこと、ハイキングや登山客の多い駅を利用されるお客様に、疲労回復の飲み物として新しい切り口で「真澄純氷のロック」で召し上がっていただくことも考えている。
町を元気にするにはいろいろな課題がある。
先ずは駅前に人が集まることを狙いとして、あくまでも商品は駅前から展開することを理念に動いてきた。
その構想の為に駅前の空き店舗や空き家を開拓してきたが、店はやっていないが年を取られた店主さんがまだ住んでいたり、次の代に世代が代わっていて所有者は都会にいるなど・・・どこの商店街でも直面する課題にぶつかりながらも、
なんとか駅前での開店へ店舗の目星がついたが、まだまだ開店までにはクリアしなければならない課題もあり、取り急ぎおんぼろのキッチンカーを買ってきて修理しながら、2019春に動き出した。
観光業と商業は別々なものではなく、それぞれが相乗効果をかけ算させたら倍々になる、
そんな仕組みを日々模索している。
観光に来た大勢のお客様がどうやったら街中に来るか?いざ街中に来ていただいたら商店街はどんな提案ができるのか?双方向の動きをミックスアップして元気をとにかく作りたいという夢が我々を動かしている。
富士見町には縄文時代を代表する井戸尻文化があり、クリとクルミを使った日本最古のパンの化石が出土していることもあって、クリとクルミの特産品を企画しながら町おこしに繋げる予定でいる。
銘水、ブランド氷の需要は今後も大いに期待できる要素を含んでいる。
我々の事業はMade in Fujimi のかき氷を先ずは多くの方に楽しんでいただき、知っていただくことを切り口に、この銘水氷をロックアイスとして商品化して世界中の方に楽しんでいただくことにある。
その事業を切り口として、次の駅前商店街のシャッターを開けるために提案していこうと思う。我々は生まれ育った富士見町が大好きで、地元愛に満ち、誇りを感じ続けていきたい。
それぞれが単体で動くのではなく、リゾートも住民も行政も商工会も、全員で動いていくきっかけとなり、ここを一つの礎にして人と人を心地よさで繋げる、次の世代へのモデルケースとなるべく夢に邁進していこうと思う。
真澄
富士見蔵仕込水
純氷かき氷